見えない技術を、社会に伝わる価値へ

対談参加者

NodeX 株式会社

高度化するテクノロジーの裏側には、社会を支える“見えない技術”があります。しかし、その価値は難解で、ときに言葉だけでは伝わりません。今回の対談では、リブランディング後に大きく進化したクライアントとの歩みを振り返りながら、変化し続ける理念や倫理観をどう社会へ翻訳するのか、そして伴走型のデザインプロセスに求められる姿勢について掘り下げていきます。

見えない“存在価値”を可視化する

齊藤 2025年にリブランディングを担当させていただいた、「Node X(ノード クロス)」さんです。本日はよろしくお願い致します。まず事業紹介からお願いできますか?

三井 防衛や医療、エネルギーなど、戦争が起きたときに止めてはならない15の基幹分野を「重要インフラ」と政府が呼んでいるのですが、それらの施設に繋がっているロボットやデバイスのセキュリティを守るプラットフォームを提供しています。近年はウクライナやイランで戦争が起きている状況下で、高度化していくサイバー攻撃から重要インフラを守る需要が高まっています。そうした中で、私たちの得意とするサイバーセキュリティ領域を、特に防衛の分野に役立てています。

NodeX 株式会社 代表取締役CEO 三井 正義 氏

齊藤 私たちがリブランディディングに携わったときは、 IoT全般向けのサービスでした。この1年半ほどで方針が大分変わりましたね。なぜ防衛なのですか? 

三井 ドローンやカメラ、各種制御システムなど、現代ではあらゆるデバイスがネットワークに繋がっています。そして近年、国家間でのサイバー攻撃は非常に活発になっています。重要インフラは社会の機能そのものを支えているため、有事の際にそこを停止させようとするインセンティブが攻撃者側に強く存在するんです。ネットワークへの侵入を許してしまうと、情報の窃取や機能停止につながり、防御側は手の打ちようがなくなる。それに対して、末端のデバイス一つひとつの信頼性や安全性を支えることで、重要インフラを守っているんです。

齊藤 なるほど、ありがとうございます。元々三井さんとの出会いは、NodeXに投資しているベンチャーキャピタルに知人がいて、その方からのご紹介でした。CEOが天才ですごいスタートアップがあると。ただ、やっていることが難しくて、どう伝えて良いか分からない。その翻訳と表現の部分をお手伝いできないかという形でスタートしました。

三井 当時は、世界中のネットワークに繋がるデバイスやロボットをどのように守っていくか。そのテクノロジーの有用性を強調していましたね。

齊藤 プロジェクトの期限は3カ月でした。ウェブ公開までいきたいということで、まず最初に着手したのは、 何が分かりにくいのかの解像度を上げること。NodeXさんの技術は汎用的なので、家電や住居、店舗などとにかく対象が幅広い。言葉で全部拾っていくと難解だし、長くなってしまう。だから言語化のやり取りは重要でしたね。

一方、社名変更のタイミングでもありました。元々は「CollaboGate Japan(コラボゲート ジャパン)」という社名だったのですが、どういうネーミングが良いかというご相談もあって。スタートアップなので、認知効率やブランディングの観点から、プロダクトと社名がイコールの方が良いと提案しました。それで、既存サービスであったNodeXを社名に一本化する意思決定をされて。

デザインで株式会社 代表取締役 CEO / CreativeDirector 齊藤智法

三井 Node(ノード)という単語は、聞き馴染みがないですよね。インターネットやネットワークを考えるときに、デバイスとサーバーの接続を、たくさんの点と線が交差しているアーキテクチャの図で表すことがあります。その点のことをNodeと呼びます。このノードとノードの通り道を繋ぐという意味で、クロス(X)していくという背景で。CollaboGateとNodeXを両方説明するコストが高過ぎて、後者だけで良いかというのが理由ですね。

齊藤 さまざまな事業を展開しようと考えている企業は、社名とプロダクトを分けて、機能やターゲットごとにプロダクト名を変えていくケースもあります。NodeXさんの場合はネーミングも一緒にすることでメリットがあるタイプでしたね。

言語化がある程度見えてきた段階からビジュアル化に入り、 コーポレートアイデンティティやロゴを手がける流れで進行しました。三井さんから頂いた資料を拝見すると、非常に優秀なエンジニアで、メタ認知ができる方だと分かる。資料も整理されていて、デザイン的な視点で事業をまとめている印象があって。 結構プレッシャーを感じるなと。 

野口 強敵だなと思いましたよね(笑)。ビジュアル化は、技術資料を噛み砕くところからスタートして。自分たちの生活に置き換えると、見えないところで守ってくれている不可欠な存在だと分かってきた。 そのような背景を伝えるシンボルを考えたとき、ふと身近にあるものに目を向けると、私が毎年神社でお祓いする「八方除け」が思い浮かびました。全方位から厄事や災難を除ける古来から親しみのある信仰と、現代の最先端のサイバーセキュリティも目指すところは一緒なんだと。それから八方除けをデザイングリッドに当て込んで、ノードとノードの結節点をイメージして、それらを繋ぎ合わせていくことでシンボル化するプランを練っていきましたね。

八方除けのデザイングリッドイメージ

とはいえ、ほかの可能性も探りました。僕らもそのアイデアが最適なのか不安だし、お互い腹落ちしないので。言語とデザイン、どちらも組み合わせて行き来しながら、場面ごとに精度の高いプロトタイプを出す。そこにイメージしやすい資料をつけて、どれが一番しっくり来るかを壁打ちするプロセスを大事にしました。打ち合わせを重ねながら、さまざまなアイデアから選択肢を絞っていった結果、八方除けのプランに落ち着くと、さらに複雑なものからシンプルなものまで両方の可能性を模索して。最終的にはミニマムなものに決定しました。

様々なロゴデザインに対応したビジュアルイメージも提案した一例

三井 一番シンプルなものに着地しましたね。一個一個のデバイスにアイデンティティを振っていく発想や、八方除けのコンセプトも日本らしいじゃないですか。神道的というか。GoogleやFacebookなども参加する技術の標準化を目的とした国際団体に入っているのですが、日本人がほとんどいない。なので、日本人ならではの発想が余計に響きましたね。このコンセプトを聞いたときに天才!と思って。

野口 ありがとうございます。そう言っていただけて本当に嬉しいです。

齊藤 選ぶ方のセンスもやはり出ますよね。 三井さんは、デザインに対しても感度がかなり高い上に、より削ぎ落とされた方が良いよねと着地されて。さすがだと思いました。 

野口 シンプルではあるけれど、NodeXさんの思想とサービスにアイデアが根幹で繋がっているというところが気に入っていただけた理由なのかなと。名刺も八方除けのお守りを常に身につけるという意味合いで、裏面にはロゴシステムを入れているんです。

齊藤 八方除けのお守りの効果も、暮らしの裏側を支えるNodeXさんのテクノロジーも、目に見えないところで私たちを守ってくれている。存在価値が似てますよね。目に見えないものが裏側に張り巡らされている、それを名刺の裏側に表現できたのはすごく良いアイデアだと思います。

デザインで株式会社 取締役 / ArtDirector 野口敏

抽象と具体を往復しながら輪郭をつくる

齊藤 ロゴが固まってきた段階で、2カ月くらい経っていました。そうすると、ウェブサイトの実装まで1カ月も切っていて、エンジニアにはあまり余裕がない状況で。

熊﨑 ひたすら最速・最短距離でできる手段を採りましたね。初めて使用するソフトの導入も必要だったので、ラーニングしながら実装を進めて。制約も多いソフトで、かつ短期間で出し戻しもあるし、その状況下でどこまで世界観を表現できるのか試行錯誤しながら取り組みました。当初はNodeXさんの事業内容が分かっていなかったのですが、手を動かしながら、すごいお仕事をされているなと実感したことを覚えています。

野口 エンジニアだからこそ感じることもありますよね。思想だけでやろうとしてもなかなかできないけど、実際にやるとしたらとんでもないことで。それをそのまま体現されている方のお仕事だという認識で、もうリスペクトです。

デザインで株式会社 UI・UX Designer / Engineer  熊﨑慎之助

齊藤 ウェブを実装しながら社内のVALUEをしっかり固めたいとリクエストもあり、並行して言語化のサポートもさせていただきました。採用目線でも、新たなウェブサイトを活用していきたいという理由もあり。所謂 BtoB がメインではあるのですが、我々はこういうものですというメッセージと、この会社に入ってみたいとプッシュする採用者向けのメッセージを両軸で作って。 私たち外野が一方的にこういうVALUEが良いのではという提案型の進め方ではなく、三井さんから考えを引き出しながら言い回しの表現を固めていきましたね。

三井 特にビジネスサイドの方に響かせるのが難しくて。弊社には、デジタルIDの技術仕様や暗号理論のような、プリミティブな仕組みそのものを設計して実装するエンジニアが集まっているのですが、この価値や面白さが世の中にダイレクトにはまだ伝わっていなくて。お陰さまで、このウェブサイトができてからは採用が大分進みましたね。

齊藤 それこそ時間がないから、意思決定する方も大変ですよ。納得していただきたいので、時間はあった方が良いと思いますが、三井さんは判断がとても早かったので助かりました。しかもフィードバックが具体的かつ的確で。デザインと言語化を並行して進める弊社のプロセスを、どう感じられたかお聞きしたいです。

三井 抽象度の高い視点と具体の行き来を同じスピードでできる人材って、やはり専門職の方でないと難しいと思っていて。ロゴデザインを考えようと社内で話したとしても、とりあえずジェネレーターでパターンを作らせて、どれにしようかと選ぶぐらいで終わってしまう。デザインでさんとのやり取りのようなことは絶対起こらない。そもそも八方除けのようなモチーフを、抽象度の高い視点でコンセプトから引っ張ってきて、そこからさまざまなプロトタイプに展開して決めていくプロセスにはならない。一緒に安心して走れるみたいな感覚は、やっぱりありがたいですね。 だから、依頼している感覚ではないです。一緒に考えてくれる伴走者みたいな。

齊藤 すごく嬉しいです。 そういう役割でありたいと常々思っているので、非常にありがたいです。ウェブサイトのアップデートも必要だと思うので、是非その話をいまからお話したいくらいです(笑)。

共に策定したMISSION VISION VALUES

社会を守る技術に、物語を与える

齊藤 リブランディングをお手伝いしたときから時間が少し空いて、その間に事業の中核が防衛の分野にシフトしたと。では、 三井さんの考え方の変化についてお聞かせいただけますか?

三井 いままでは技術の可能性や広がりをミッションやビジョンに置いていました。しかし、この1年近くで、技術やイノベーションを通じて、安全保障や人命をしっかり守るという社会的意義を果たせる段階にまでようやく来れました。このメッセージを強く押し出したいのですが、言葉選びが難しくて。日本では「防衛」という言葉にアレルギー反応を示す人が多いのも事実なので。

齊藤 確かに。武器を持たない、核を持たない、戦争しないというね。戦後の平和主義の理念がベースにあるから、「防衛」と聞いただけで過剰反応する。でも三井さんのやられていることは、血を流さない防衛。 戦わずしてむしろ守る方、その裏側を作っている。自分たちをカバーしているバリアみたいなもので、まさにロゴマークの八方除けと同じ役割だと思っています。 

三井 僕が魅力だと感じる焦点も変わってきていますし。社会インフラを守る役割の格好良さもあって、そこにロマンを感じて集まっているメンバーたちがいる。スタートアップの製品が国家の中核である安全保障に携わるという、前例がなかったことを経験していて。誇りとワクワク感と、そのベースにあるのが技術の面白さというロジックは、1年半前には表現できなかった。いまは僕の中に確かにあるから、これを言語化していきたいと思います。

NodeX 株式会社 代表取締役CEO 三井 正義 氏

齊藤 NodeXさんのウェブサイトには「境界がない世界に辺境から挑む。」というタグラインがあります。 「辺境から」という言葉遣いは、非常にスタートアップらしい。 いまは、辺境を通り越して、社会の中核である重要インフラの分野に到達している。この1年半で景色の変わり様がすごいなと思っています。 声をかけていただいた当時の、やばいスタートアップがあるという言葉を地で行っている感じがして、すごくワクワクしています。

三井 

ありがとうございます。ここに来てAIが一般化したじゃないですか。特定のSaaS分野は窮地なんですね。インフラやデータを持たないアプリケーションレイヤーでは、機能が簡単に作れてしまうので。そうした企業の価値はAIの向かい風を受けて下がっているのですが、グローバルで見ても下がっていない分野があるんです。OSとアプリケーションの間で動いてデータのやり取りや通信を助けるミドルウェアと、セキュリティの二つです。両分野を専門とする僕らは、基本的にはAIの恩恵・追い風しか受けない立ち位置にいます。

「わかりやすい」は常に正義です。人に伝わりやすくて、手触りがあって、何を解決するものかが明確なもの。でも、それらの一部はAIで代替されていく。一方でNodeXのサービスは、説明が難しい代わりに、AIには代替されない。だからこそ、本質的に価値があるけれど分かりにくいものを、どうやって伝えていくのか。そこがより大事になっていくと思っています。

齊藤 それこそ難解なものを抽象化して具現化する能力というか、AI ができない力が必要になってくる。

デザインで株式会社 代表取締役 CEO / CreativeDirector 齊藤智法

三井 そう思います。GoogleやFacebook、Xなど、これだけ世界中の人々が日夜インターネットに繋がって、膨大なデータやツイートを捌けているのは、インフラを支える技術の恩恵なんです。彼らが開発した独自のテクノロジーがあるから成立しているのであって、数億人がリアルタイムにつぶやけるサービスで本当に凄いのは、それを裏で支えているインフラ側なんです。でも、その人たちの存在は意外と知られていない。そういう人たちがクールだよねという文化が、インターネットの初期カルチャーにはあった。欧米では社会のインフラを守るテクノロジーにお金が集まるし、それがものすごく格好良いスタートアップだという空気が社会通念としてあります。日本でもそういう機運になったら良いし、どんどん注目が集まっていく時代になっていく。NodeXにはそういったカルチャーがあり、その点も伝えられると嬉しいです。

野口 イノベーションで社会のインフラを支える人の態度に、実はクールでパンクな部分もあるんだよねと以前お伺いした覚えがあります。

三井 保守主義やナショナリズムに寄りすぎず、テクノロジーとしてのカウンターカルチャーみたいな。そういう文脈を混ぜたいんですよね。

三井氏と共に策定したフィロソフィー

未来への責任を、デザインと共に考える

三井 最近は「フィジカルAI」という言葉が聞かれるようになりました。ロボットが最先端のAIで賢くなり、周囲の環境を認知・理解して、自律的に判断し行動していく。これまで人間が担っていたことが、ロボットやデバイスに置き換わっていく時代になりつつあります。そうした自律的なデバイスに対して、これは本当に味方なのか、この指示は信頼できるのかを判断するテクノロジーは、防衛や重要インフラの領域でこれから不可欠になってくる。

一方で、AIもそうですが、同じ技術が使い方次第では攻撃の実行性を高めることにもつながり得る。僕たちのセキュリティ技術が、間接的にであれ攻撃に加担してしまうかもしれない。そういう状況で、どういう温度感でどこまで考えを打ち出していくべきか、ふと考えることはありますね。

齊藤 それは、倫理観とかも関わってくるのではないでしょうか。セキュリティの世界にも起こりえると思いますよ。身近な例だと、米・アンソロピック社のAIの戦争使用の是非で、米政府と同社が対立しましたよね。

三井 まさに倫理観の話なんです。そういえば、映画『オッペンハイマー』を観たときにも、そんなことを考えさせられました。強力なテクノロジーには、それを扱う側の倫理がいつも問われてきた。技術が大きな力を持つほど、その使い方の責任も重くなる。だからこそ、ミッションやビジョンに僕らの倫理や善悪の観点を織り込まないといけないと思っていて。デザインを通じてそこをどう表現するのか、ビジョンの言葉にどう包んでいくのか。これが次の課題ですね。とてもハードルは高いんだけど。

齊藤 いまの段階からそこを意識して作ればすごく良いですね。論争のときは色々考えさせられることがありました。自分たちが扱うAIに対しても然りで。その判断基準はすごく難しい。

野口 私たちの生活は、あらゆるソフトウェアに依存していますよね。もしセキュリティを破られてマシンやドローンが乗っ取られて、悪意のある人たちが勝手に操作したら、無差別に攻撃されてしまう未来が訪れてしまうんじゃないかと思っていて。その予防策の技術も三井さんの視野に入っているのでしょうか?

三井 入っていますよ。実際、紛争においては、物理的な攻撃の前段階でインフラへのサイバー攻撃が行われています。医療をはじめとする、本来止めてはならない領域まで標的になり得る。国際法上は許されないはずのことが、です。AIを使った攻撃に対して無防備でいることは、いま日本が置かれている状況を踏まえれば、いくつもの厳しい局面が想像できてしまう。

僕らに戦う力はありませんが、テクノロジーやイノベーションで社会インフラを支える技術を作る能力はあります。僕はいま37歳ですが、30代で社会にどんなインパクトを与えられるのかを考えながら、仲間と一緒に挑戦できていることが、誇らしいし、楽しいし、何より面白い。サービスを一発当てようとか、お金のために働くとか、そういう覚悟でやっているわけじゃないんです。この熱量をインターフェースを通じて伝えていきたいので、表現の部分でぜひ相談させてほしいと思っています。

齊藤 スタートアップはある種、どんな成長曲線を描くのか予測不可能な部分があるじゃないですか。 事業計画はしているけれど、実際どうなるかは異なることも多々あって。それを予想以上のスピードで駆け上がっている三井さんの話を伺って、我々のチームがお手伝いできる可能性がここにあるということが、本当に良かったと思います。また新しい取り組みを是非ご一緒させてください。 本日はありがとうございました。

Project Team

DESIGND:

  • Tomonori Saito

    Creative Direction / Brand Design / Identity Design

  • Satoshi Noguchi

    Art Direction / Brand Design / Identity Design / Logo Design / Graphic Design / Web Design / Motion Graphic Design

  • Ryusei Sakiyama

    Graphic Design

  • Shinnosuke Kumazaki

    Web Design / Web Coding

Design Partner

  • DNX Ventures

    Venture Capital