コロナ禍は日本の伝統芸能の世界にも影響を及ぼしました。喜多流能楽師 塩津圭介氏は能楽堂での講演だけでなく、縁のある土地の屋外で公演を行う企画を立て、国の助成金を活用したり、ふるさと納税の仕組みと組み合わせることで、厳しい時世の中でも積極的に公演を実施してきました。弊社は、北海道の帯広で開催された「帯広能」と、大分県の竹田で開催された「竹田薪能」の宣伝活動と当日の会場周りの演出にデザインで向き合いました。
食料自給率1200%を誇り、日本の食を支える北海道帯広の広大な大地で実施される「帯広能」は、まさに五穀豊穣を祈る神事としての能本来のあり方に立ち返るようなイベントです。地元の方にとっても親しまれ、喜ばれる公演にするべく、企画運営に携わる株式会社トリデンテのチームと連携して世界観をつくり上げました。「この土地と日本の伝統に、向き合う夏。」というメッセージと共に広大な大地の上で能を舞う能楽師をキービジュアルにしました。
「竹田薪能」は、喜多流にとっては特別な公演です。かつては年に1回実施されてきた背景がありましたが、諸事情あってここ数年は実施できていませんでした。今回厳しい状況の中ではありましたが、逆に助成金を活用してこの公演を復活させることができました。竹田という秘境で過ごす非日常の体験と薪能の幽玄な世界を、地元の方だけでなく首都圏からも集客できるように事前の宣伝活動にも力を入れました。屋外で行う能は天気次第では中止になります。雨天の場合のバックアップも考えながら実施された薪能は、公演終了とともに雨が降り始める奇跡の公演となりました。