思考を翻訳し、 ブランドを育てる共創プロセス。

対談参加者

株式会社Srush

バリュー設計から始まり、ビジョンの言語化、ビジュアル開発へと展開してきた事例です。クライアントの頭の中にある壮大な構想やストーリーを受け取り、それを解釈し、ひとつの世界観として可視化していく。それが組織の内側まで浸透していくとき、どのような風景を生み出すのか。言語と視覚表現にある、曖昧なあわいをいかに補完してきたのか。そのプロセスをたどりながら、二人三脚で成長してきた”共創関係”を明らかにします。

壮大なビジョンにデザインで伴走した4年間

齊藤 本日はよろしくお願い致します!さて、簡単な事業紹介からお願いします。

樋口 株式会社Srush(スラッシュ)は、オールインワンのデータ分析ツールとコンサルティングサービスを展開しています。高度な専門知識がなくてもデータを活用できる人材を育てる仕組みづくりや、地域の中小企業向けのデータ活用サービスなども行っていて、「データを誰にとっても身近なものにする」ために日々活動しています。

株式会社Srush 代表取締役 CEO 樋口 海さん / データ分析支援事業本部 DPO拡張部 部長 田ノ岡 大貴さん / 経営管理部 HR 古谷 智美さん

齊藤 初めてのお仕事のご依頼を受けたのは、2022年でしたね。当時は創業メンバーを含め4〜5名ほどの小さなチームで、ここから採用に力を入れたいというタイミングで。自分たちのカルチャーを規定していくためのバリューの整理と、それを伝わりやすくコンテンツとして活用していきたいというご相談でしたね。

デザインで株式会社 代表取締役 CEO 齊藤智法

樋口 データを軸に事業展開する見通しが立った段階で、投資家から資本を注入されて、まとまった金額ができた。そこからどう世界を作っていくのか、社会とどう関わっていくのか。その土台に、共有できるようなキーワードが必要だと考えていました。

齊藤 スタートアップの経営者にはさまざまなタイプがいらっしゃるんですが、樋口さんは当初からこうありたいというビジョンが結構はっきりされてました。まず漫画の絵を見せられて。古代中国の戦国七雄の争乱が舞台の漫画『キングダム』だったんですが、壮大なイメージを頭の中に描ける人だというのが第一印象でした。

株式会社Srush 代表取締役 CEO 樋口 海さん

樋口 そこから勢いをつけて、新しいプロダクトを出して売上が伸びていたんですけど、2024年末くらいに僕が“闇堕ち”してしまって。一体何のためにやっているんだろうか、社会性とは何だろうかと立ち止まる時期があって。そもそもゴールはなんだっけ? の問いからその答えを考えていたときに、「データ活用先進国」という構想が浮かんできたんです。

齊藤 そのときまでに、コーポレートサイトとプロダクトサイトのリニューアルも弊社で請け負わせていただいたのですが、ここで再びご相談をいただいて。それが2025年に発表した「Srush Vision 2030」でしたね。

樋口 日本は企業の92%がまだデータを十分に活用できていない現状がある。上手くデータを活用できれば、海外に対してもっと日本の国際競争力を上げられる。そんな自分たちの現状打破のストーリーと、日本の歴史が重なって。「Srush Vision 2030」では、織田信長の統一事業を『データ統一クラウド』に、坂本龍馬の身分制度撤廃を『スラッシュAI』の誰でも使えるツールに、そして明治維新の富国強兵をいま力を入れている教育・人材事業になぞらえた展開にしました。データ活用の波が、日本全体を包み込めば、再び国際競争力を取り戻して新たな未来が創れる。そんな構想から生まれたストーリーをカタチにしていただきました。

﨑山 具体化するにあたって、Srushのコーポレートカラーは青なんですが、例えば大手銀行の落ち着いたシックな青ではない。スタートアップでもあるし、この業界を変えていく若さみたいな要素もある。樋口さんの人間性というか、パッションを表現しつつ、先進性も見せていきたい。なのでイラストレーションには気を使いましたね。あえて表情は入れない代わり、動きにはダイナミックさを意識して。フォントや赤系の差し色の使い方も工夫しました。

樋口 実際に手を動かしていただく前に、こんなイメージですとたくさんのメッセージを送りましたよね。僕からあえてビジュアルを出さないようにしていて。というのもそれに縛られて欲しくない。いつも落としどころのない状態で持って帰ってもらって、でもいざ提案になると、初回から満点くらいのクオリティーで上がってくるんですよ。

デザインで株式会社 Art Director / Designer 﨑山 龍晴

﨑山 最初はキャラを作るような想定だったんです。ディスカッションを重ねていく中で、やっぱりシーンで捉えた方がこの世界観を表現できるという方向性にシフトしていって。手を動かしながら話を聴いてラフを描いて。どんどん動きが出てきて、より緻密で熱のあるムードが出来上がっていきました、そのプロセスが楽しかったですね。

古谷 採用面接でも、コーポレートサイトやプロダクトサイトを見たという応募者に感想を聞くと、皆さんすごく素敵なサイトだと褒めてくださる方が多くて。「Srush Vision 2030」のストーリーを見ると、私たちが何を考え、何を実現していこうとしているのかが臨場感をもって感じられる。ビジョンに共感して、すごく面白そうですというコメントもよくいただきます。

株式会社Srush 経営管理部 HR 古谷 智美さん

思考を料理するデザイン力

齊藤 樋口さんの頭の中にテキスト情報、ストーリーが大きく広がっていて、それをひとつに収斂してまとめ上げていくところに、我々の価値を感じていただいているのかなと思います。Srushのサイトの更新頻度は多いのですが、サイトを見て依頼してくるクライアントも多いのでしょうか?

樋口 顧客というよりは、私たちが何をする会社なのかを1〜2秒で分かってもらうことが目的ですね。そもそもデータ人材になろうなんて思わないわけで、いっそ職業ごと名称を作ってみようと思って。デザインで株式会社さんにも入ってもらって、ブレストしてたんですよね、それがすごい大変な作業で。どうしようかと思っていたら、「データガーディアン」という呼称が対話の中から生まれてきた。なんだか引きつける響きがありますよね。自分の納得感がすごくあったので、採用することになって。これまでの一番のブレイクスルーだと思っています。AIでは全然出てこないですね。生成といいながら、既存のものを送信してくるだけなんだと。やっぱり0→1は人間にしかできない。

齊藤 それはすごくありがたいことです。AIで出てきてしまうことしか提案できなかったら当然立ち行かないので。ちゃんと向き合わせていただいたおかげで、樋口さんの頭の中で焦点が定まって生まれたネーミング。そういう経験でしたね。

樋口 なんだか食材だけ丸ごと持って帰ってもらって、それを合理性で調理して返してくださる感覚なんですよ。

株式会社Srush データ分析支援事業本部 DPO拡張部 部長 田ノ岡 大貴さん

田ノ岡 私もキャリアの中で、ホームページの制作ディレクションやプロジェクト進行を経験したのですが、デザインで株式会社さんとお仕事をしてデザイナーに対する概念が変わりましたね。私たちがまだ言語化できていない何かまで、会話から汲み取ってくださるんです。うんうんと聞いてくださったり、飲み込んでくださったりするのですが、決して迎合するわけではない。そのバランス感がすごい。

齊藤 樋口さん自身やSrushの周りのメンバーもちょっとまだ迷ってそうだなみたいなところがあると、自分たちも腹落ちするまでコミュニケーションを重ねることも大事だと思っています。その核の部分が定まっていないまま走り出すことほど、危ないことはないですからね。

角谷 さまざまなクライアントさんとお仕事させていただいておりますが、Srushさんとの関係性はトップクラスですね。だからこそ、言葉足らずな部分がお互いあったとしても補填できるし、言葉がありすぎても良い塩梅に調整できる間柄なんだと思います。

デザインで株式会社 Producer 角谷 淳

カルチャーとして進化するVALUE

齊藤 スタートアップのクライアントから、VALUE(バリュー)を作りたいという相談をよく受けます。VALUEをそのままバリューと呼ぶケースもありますが、Srushは社内独自のカルチャーコードに落とし込みたいと。「個性の強い人が集まる会社」を目指していらっしゃるので、働く社員のパーソナリティやポテンシャルをも包括する言葉が欲しいと。そして採用や評価基準に活用したいという課題もありました。そこで社員の皆さんからヒアリングを行ったのですが、夢や愛、信頼といった心情にまつわる価値観をとても大事にしていることが分かった。やはりVALUEでは括れない別の言葉ということで、より包含力のある「Pride(プライド)」という呼称に落ち着きましたね。

樋口 うちの従業員全員、この「Srush Pride」が好きですよ。というか、 超好きです。でもこれを僕がテキストで言ってるだけで絶対無理で、思想を体現する格好良いビジュアルがあるから共有できている。 これは本当に成功施策。とてもありがたいなと思っていて。 しかも、この「Srush Pride」が社内イベントにまで波及して、現場メンバーで報告会のプレゼンを定期的に開催しています。「Srush Pride」の世界観に影響を受けて、それぞれがプレゼン資料も工夫して仕上げてきて。だから盛り上がり方が尋常じゃないというか、もう執務室が拍手と笑い声と揺れてるんです(笑)。すごい熱狂的。

齊藤 熱量があることが社内強化につながるし、会社の雰囲気も良くなっていく。肯定される意識があるから、こういう取り組みにも繋がっている。スタートアップの仕事で一番大事にしているのが、僕らが作ったものが武器にならないと意味がないという意識です。せっかく制作したのに評判が良くなくて結局リニューアルすることになると、お仕事をした価値がなくなってしまいますから。こうやってすぐに利活用いただいているとフィードバックをいただいて、本当にやって良かったと思います。

継続的に価値づくりを行うパートナーを目指して

田ノ岡 今後は地域の中小企業へのアプローチが課題になっているのですが、私たちが思い描くことをどう伝えていくか悩んでおりまして。日本は今後こうなると良いよね、みたいな啓蒙するような何か。言葉だけでない、憧れるようなコミュニケーションを模索していて。まだ抽象的なのですが、ご一緒にカタチにしていきたいと考えています。

齊藤 各地に散らばる同士といいますか、データガーディアンとなる方たちを取り上げて、発信を全部束ねるようなプラットフォームはあるんでしょうか。 私たちと付き合いのある会社では、社内の人材をタレントと呼んで、PRに活用するメディアプロダクトを作っていることもあります。

樋口 地域に伺って啓蒙や教育だと思ってたけど、 データガーディアンがなんたるかが定義できない以上、多分進まない。自分たちで仲間を見つけに行くことも、その枠組みの一環としてできますね。それやりたいな、やりたい!

齊藤 日本全国津々浦々のデータガーディアンの活躍や生の声が集約されたプラットフォームになりそうですね。

樋口 確かに! 僕らも結局人材の会社になると思うんですよね。 その視点で考えたとき、いかにデータガーディアンが成長したりとか、キャリアが開いたとか、可能性の広がりを伝えたい。 教育に舵を切ろうと必死でした。 全然違うかもしれない。 いや、めちゃくちゃ良い。

齊藤 ある地域の誰々さんのデータ活用を記事化することで、すごく具体的に伝えられる。

樋口 いやすごい。 めっちゃ良いと思った。 コンテンツとしても上質だし、個人にスポットライトを当てたいから、一緒に作っていきたい世界観の解像度がグッと上がる。 ご当地の大使として任命しても良いし。個人に問い合わせが来れば、副業や仕事の広がりも持てるし。ひいては業界全体にも広がっていく。 めっちゃ良い、確かに。 

齊藤 脳って、シナプスに電流が走るとかいうじゃないですか。樋口さんとのコミュニケーションは、その瞬間が見えるんですよ(笑)。

樋口 いまのやり取りなんて顕著な例ですよね。 いかにそのリアルなタイミングで、偶発性や必然性を織りまぜながらストーリーに落とし込むか。AIからは出てこないところが今後お互いに差別化になっていくと思うんです。 なぜなら人工知能はソースでしかないから、精神が宿らない気がしていて。Srushがやりたいことを、デザインで株式会社さんに補完していただき補強していく。ある意味、僕をリードしてもらいつつ、そこは引き続き期待しています。AI によって置き換わらない領域ですからね、やっぱり。 

齊藤 ありがとうございます。 こうやって何かあったら相談し続けていただける状態を我々も保っていけるよう、アップデートし続けていかなければと思っています。 いろんな仕事をしていて、なかなかこういう長い関係性を築けることが稀なので。 

熊崎 私もエンジニア視点で、このプロジェクトには期待することがあって。現在は予算の関係でSrushさんが自ら手を動かしている部分がありますが、本当はもっと我々にお願いしたいことはあるんじゃないかと思っていて。一緒にデータを分析しながら、新規顧客との接点をデザインして売上に繋げる取り組みだとか。視覚的なデザインだけではなく、サービスとユーザーをどう繋げいくかの提案も是非やってみたいですね。

デザインで株式会社 Design Engineer / Digital Director 熊崎 慎之介

樋口 本日の話を伺って、本当に枝葉のところのデザインのやり取りも、僕の人間性を理解してくださった上で作っていることを実感しました。5〜6年の間で積み上げてきた歴史というか。僕の情報はネットにはそこまで落ちていないので、齊藤さんたちの方が持ってるくらい。重要なクライアントのパーソナリティな情報は、資産になっていくと思うんですよね。いままで大事にしてきたところがちゃんと伝わっていることが分かって嬉しいです。胸張ってこれからも色々と会話させていただいて、デザインでさんと向き合えればなと思いました。

Project Team

DESIGND:

  • Tomonori Saito

    Creative Direction / Brand Design

  • Ryusei Sakiyama

    Art Direction / Brand Design / Graphic Design / Web Design

  • Hayato Fujii

    Graphic Design / Web Design

  • Shinnosuke Kumazaki

    Web Design / Web Coding

  • Rina Takashimada

    Graphic Design

  • Atsushi Kakuya

    Produce

Design Partner

  • Design & Days

    Motion Graphic Design

  • Misako Horii

    Illustration