株式会社tomoruは、不動産業界の細分化した事業構造を俯瞰して捉え直し、あくまでも顧客(オーナー)が実現したいことに立脚したワンストップな提案ができる事業としてのあり方を模索していました。弊社は、社名検討の段階からコーポレートBI全体の設計まで、デザインで向き合いました。社名のtomoruに込められている、「共に」と「灯す」の意味を象徴したシンボルマークを中心に世界観を構築しました。
企業のシンボルマークやカラーを策定する際には、創業者と向き合い、デザインに昇華できるヒントやエッセンスを引き出すことが不可欠だと考えます。tomoruの代表森村氏の女性経営者としての経営思想や、感性を重視する意思決定のあり方は、まるでパウル・クレーの抽象的な風景画のようでした。色彩や構成は、そこに何か意味や秩序を与えることによって機能を持ちます。不動産事業という限定的な視点ではなく、その周辺や土台にあるものまで思いを馳せて、ブランドフィロソフィー全体を設計することを試みました。
コーポレートサイトでは、事業のプロセスを一方通行に捉えずに、顧客と向き合う中でサステナブルに成長していくイメージを概念図化しました。到底一言で説明できない複雑な思想や事業内容でも、必要な要素を整理して概念図化する方法は必ずあります。そして、「共に生まれ変わる、不動産づくり。」という企業フィロソフィーに、tomoruの姿勢が集約されています。このワーディングを見つけるプロセスも、森村氏の脳内からワードを抽出して絞り込んでいくワークショップを行い導いていきました。
名刺や封筒などのコーポレートツールにおいても、多様性や調和を大切にするtomoruの思想をデザインで表現しています。紙に印刷する媒体ではあたたかみのある水彩のテクスチャの風合いを再現し、いくつかの名刺裏面のデザインから個人が選べるような仕様にしています。オンスクリーンの時は空間的な奥行きを持たせ、オンペーパーの時は物質的な肌触りを持たせることで、ブランドアイデンティティを媒体に最適化しています。